始まりは途中から。
▽◆◇◇◇◇
銀色の刀が路地裏の暗闇の中で光る。
「はぁーあ、俺疲れちゃった。君のせいだよ。」
太ももの真ん中あたりぐらいまでの灰色のパーカーが風に靡く。
「……って、もう返事なんてしないか。」
あはは、と口先で笑った人影。
灰色のパーカーのフードがパサリと静かに音をたて、人影の……いや、少年の顔があらわになる。
それはそれは、美しい少年だった。
月光が少ししか入らないここでも分かってしまう程、顔が整っている。
少し癖毛のある髪、スラッとした細身の体のシルエット。
そしてまだ中学に上がりたてのような幼い顔をしており……、その顔には妖艶な笑みを貼り付けていた。
薄ら笑いとも読み取れるその笑顔は、幼い顔とは裏腹に色っぽい大人を連想させるかのような……。
「……ふふっ。」
ポツリ、と、効果音でもつきそうで笑いを零したかのような音が、重力に身を委ねて空気の中を落ちる。
それを合図とともに少年は歩き出した。