私の好きな警察官(ひと)!
「ちょっと!生田?黙って聞いてりゃさっきから」


「じゃあ聞くけど、赤羽」



途中で生田に遮られた私の言葉は音になることなく消えていく。全く……これだから生田は。


「何よ?」



蓮見さんはもうだいぶ呆れていて、交番の入口に仁王立ちで腕組しながら私と生田を見ているし、ほかのみんなもこれから生田が何を言うのか若干耳を澄ませながら待っている。



そして、このあと放たれた生田の言葉に、



「俺とコイツ、どっちがキス上手かった?」



その場にいた全員が凍りついたのは言うまでもない。
いや、正確には凍りついたのは私だけで、眉間にグッとシワを寄せた蓮見さんを除いて他のみんなは沸き立ったような気もしなくもないけれど、



もうそんなのどっちでもいい。


この男は、何を言っているんだろう。
あれほど、あれほど資料室でのことは……なかったことにして欲しいって言ったのに。


まさか、みんなの前で……それも蓮見さんの前で暴露されることになるなんて思ってもみなかった。


「……な、何言ってんの!蓮見さんとキスとかそんなの……」



したことないんだから、比べられるわけないじゃない。
それに、上手いとか下手とか分かんないけど、蓮見さんとキス出来ちゃった暁には間違いなく幸福感で満たされるだろうなって思う。



「は?23にもなって、まさか身体の関係もない男に溺れてんの?」



ジリジリと私との距離を詰める生田に、もう半分泣きそうになりながらキッと睨み返す。



「私は生田みたいに誰でもいいわけじゃないもん」



そういう事はちゃんと好きな人と、もちろん相手も私を好きだって思ってくれてることを確かめ合ってからしたい。そう言うもんじゃないの?
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