私の好きな警察官(ひと)!
仕事終わりに寄った交番には、今日も相変わらずかっこいい蓮見さんの姿があって、


『お疲れ様です』と声をかけた私に、『お前もな』と不器用な言葉をかけてくれたのは紛れもなく私の彼氏だと思いたい。



……いや、さすがに。
私の勘違いってことはないと思うのよ。


だって、確かに蓮見さんは『俺と付き合う?』って聞いてきたわけで、それに対して私は必死に頷いたわけだから。


間違いなく、私が彼女で蓮見さんは彼氏。
いや、なんなら私が彼氏でも何でもいいから。


とにかく、私たちの関係はちゃんと前進してるんだって安心したい。……だけど、仕事中の蓮見さんはもちろん仕事第一の人で、こんなこと聞ける雰囲気じゃない。


ましてや、いつも周りに松本さんや高橋さん、浪岡さんなんかがいて……何となく蓮見さんは私と付き合ってること、周りに知られたくないんじゃないかな?なんて思うし。


かと言って勤務形態が特殊なせいで休みがかぶる事なんてほぼない。


この間の映画デートは本当に本当に奇跡だったんだと、改めて痛感することになった。



……あぁ、でも。
本当に本当にこのままじゃ蓮見さん不足で倒れそう。
ちょっとくらいなら、電話してもいいかな?


もう0時を回っている今、仮眠中だったら悪いしな……と、私の理性は必死に働こうとしている。


だけどこのままじゃ、眠れないまま朝を迎えそうで。


……私は思い切ってディスプレイをスライドさせていく。『蓮見さん』の名前を見つけて指を止め、


一度深呼吸をしてから発信ボタンをタップした。



ほんの少しでいい。
声を聞いてから眠りたい、なんて。


私は蓮見さんと出逢ってからどこまで乙女になってしまったんだろう。
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