私の好きな警察官(ひと)!
おかしいな、かける前よりずっと不安になってる。
『……おい?なんかあったなら』
「おやすみなさい!」
『は?ちょ、』
蓮見さんの言葉を待たずして電話を切れば、虚しい機械音だけが私の鼓膜を震わせる。
蓮見さんが『彩華(あやか)』と呼んだ。私のことは、1度だって名前で呼んでくれたことなんかないのに。
名字ですら、1度だってないのに。
どんな関係なのかな、とか。
今2人はどこにいるのかな、とか。
彼女が電話に出たことを、特別 何か弁解するわけでもなかった蓮見さんの態度に、やっぱり付き合ってると思っているのは私だけなのだろうかと、
ただ、一言。
蓮見さんからの『おやすみ』が聴きたかっただけなのに。
相変わらずからまわってばかりの自分に嫌気がさした。
眠れない。
こんなんじゃ全然眠れないんだから。
らしくない涙がポロポロと頬を伝って、電話なんてかけなきゃ良かったと元も子もないことを考える。
別に喧嘩したわけじゃない。
私が気にしなければ、明日の朝もいつも通りの笑顔で交番に駆け込めさえすれば、そこにはきっと変わらない蓮見さんが、少し面倒くさそうにしながらも『毎日来んなよ』って迎えてくれるって分かっている。
だけど、
「絶対、明日の朝 顔腫れてるよぉ」
何だか、蓮見さんと出逢ってから初めて、交番に行きたくないと思っている私がいて、
「私ってば、本当に恋愛に向かないなぁ」
自分じゃもう止める術を知らない涙が、お気に入りの枕をどんどん濡らしていく冷たさに心まで冷え始めている。