私の好きな警察官(ひと)!
「……あの、何でここに?」
「別に」
「えっと、約束とかしてましたっけ?今日は残業で少し遅くなって……!来るなら来るって、連絡くれたら良かったのに」
目の前には映画デートぶりに見る、私服姿の蓮見さん。
薄暗くってよく分からないけれど、ちょっとだけ不機嫌そう。
「なんで今朝、来なかったんだよ」
「……へ?」
「俺がいたっていなくたって毎日来るくせに」
「あ、朝は寝坊しちゃって!寄ってる時間がなかったんです」
ジリッと詰められた距離に反射的に一歩後ずさる。
何か責められてるみたいな気持ちにすらなる蓮見さんの言葉に、必死に回転の遅い頭を働かせて理由をつければ
納得いかないとばかりに蓮見さんは続ける。
「じゃあ、昨日の電話は何だ?」
「あれは、寝る前に蓮見さんの声が聴きたくなって。仕事中だし迷惑かなって思ったんですけど……ごめんなさい」
「なんで謝んだよ。かけたい時にかけりゃいい。ただ仕事柄 いつでも電話に出られるわけじゃねぇし、気づけない時もある」
ボソッと呟かれた言葉に、私の心に積もってたモヤモヤが少しだけ溶けていくのを感じながら、それでも全てのモヤモヤが晴れないのは『彩華』のせいだって気づいてる。
「昨日のこと、心配して来てくれたんですか?蓮見さんってば、意外と心配性ですね」
きっと今、私は困ったように笑ってるだろうな。
昨日の女の人のことを自分から聞くことは出来なくてモヤモヤしたままのくせに、こうして朝まで仕事をしていた日の夜に私のためにこうして会いに来てくれた。
それが、どうしようもなく嬉しくて。
複雑な気持ちが交差する。