私の好きな警察官(ひと)!
「昨日の電話の後、高橋に言われたんだよ」
「何をですか?」
「"今頃、勘違いして泣いてるぞ"って」
「…………っ」
うわ、図星すぎて何も言えなかった。
ここは嘘でも『泣いてないですよ』とか『勘違いって何のことですか?』とか白を切る場面だったに違いないのに。
「昨日、あの時間に女が1人交番に駆け込んで来てたんだよ。しかもちょうど家の前でストーカーと出くわしたとかですげぇ取り乱しながら」
「ストーカー……そ、それは怖いですね」
ゾワッと背筋に冷たい何かを感じて自分で自分を抱きしめた私に、蓮見さんはゆっくりと続ける。
「その駆け込んで来た女ってのがまた厄介な奴で。……俺の元カノだ」
「っ、」
あぁ、だから『彩華』って呼んだんだ。
あの気の強そうな少し怖い印象の彼女は蓮見さんの元カノさんか。
「お前からの着信に気づいた時、ちょうどそいつの対応中で後で出るか折り返すか迷ってたら、横からスマホごと奪われて」
「……そうだったんですね!急に女の人の声が聞こえてきたのですっごいビックリしちゃって……でも別に勘違いとか、そんなの全然」
なんて、自分で言ってて笑っちゃう。
朝まで泣き腫らした顔は、夕方近くまで腫れぼったいままで、今も少しまぶたが重い。でも暗闇が全て隠してくれていると信じて、私は気丈に振る舞う。
「……その元カノの件、俺が対応する事になった。しばらくは付きっきりになるかもしれない」
「蓮見さんは、警察官ですからね」
本当は、頭を鈍器で殴られたみたいに鈍い痛みがじわじわと私を襲っているけれど、蓮見さんの重荷になっちゃいけない!って言う私の意地が、ギリギリのところで私を強がらせる。