私の好きな警察官(ひと)!

「蓮見さん、今日は夜までいますか?」


「居ても居なくても毎日毎日、交番に用もなく来んな」


「用はありますよ!蓮見さんとの愛を……」


「あ!早くしねーと、電車行っちまうぞ」



私の言葉を遮るように、蓮見さんが左手につけている腕時計へと視線を向けて、急かすように呟くから



「うっそ!もうそんな時間ですか?」



私は慌ててスマホで時間を確認した。



ゲッ、本当だ。
もう8時15分になろうとしている。



蓮見さんとの時間はいくらあっても足りない。朝の10分と、仕事終わりの10分。1日でたった20分しかないんだもん。


それに、非番だったりお休みだったり、はたまた休憩だったり、通報があったりして現場に駆け付けていたりすると、仕事終わりに寄ったって、交番に蓮見さんはいない。


つまり、1日に10分〜20分。
蓮見さんとこうしてお話を出来る貴重な時間は、



私にとって、とってもとっても特別なのだ。



が、しかし。
食べていくためにはもちろん、働かなくてはならないわけで。蓮見さんと5分で会えるあのアパートの今月分の家賃の支払いも迫っているわけで。



「あ〜!蓮見さん、私が働いてる間に浮気しちゃダメですからね!」


「浮気も何も俺とお前は何でもねぇだろ、さっさと行け」


「ぐふっ……」



夢くらい、見せてくれたっていいじゃんか。
1日乗り切るやる気くらい、くれたっていいじゃんか。


いや、これでこそ蓮見さんなんだけど。
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