隠れクール上司 2 ~その素顔は君に見せはしない~
半年か……。
東都シティを離れたのが4月。それから繁忙期を迎え、終えて9月になった。前よりも頻繁に航平は誘ってくれるようになり、月1度会って仕事のことを教え込まれたせいか、時々電話で相談したせいか、各段に今の店が良くなったことは自分でもひしひしと感じていた。
すごいなあと思う。
営業部長って。
電話では特に、悩み悩んでどうしても分からない事を整理して伝えるが、答えはほんの一言だったりする。
もしも入社してから今までずっとこんな風に仕事を教えてもらっていたら、もっと仕事ができていたのではないか、と後悔してならないし、今の力を東都で試したいという気持ちも大きくなっていっていた。
だけど。東都でカウンター副部門長で、今がランク下の店のカウンター部門長。もう一度戻るとしたら、それなりに力を付けて戻らないといけないし、それにはまだ足りない気がするし、今いる東都の野坂副部門長を押しのける力が必要だ。
「関 食事入りまーす」
トランシーバーのマイクに向かって断ってから食事に入る。もうここに関店長はいない。わざわざ関 美生と言う必要もない。いつも関さんと苗字だけで呼ばれてそれで通じるし、何も迷う必要はない。
「はあ……」
廊下を歩いてスタッフルームに入る。東都に比べると随分小さなスタッフルームだ。
突如、制服のスカートのポケットでスマホが振動し、すぐに表示画面を見る。
知らない番号だが、市外局番が東都の辺りだ。
「はい」
すぐに出る。
『お疲れ様です。本社人事部の志田です』
志田……人事副部長だ!!
「はい!」
人事だ!
『今電話大丈夫かな? 人事の話だけど、内示だから人がいない所に行ってくれる?』
「はい!!」
慌ててスタッフルームから出て、誰もいない廊下の隅に入る。
「大丈夫です!!」
『関 美生さん。10月から東都シティ本店のカウンター副部門長へ異動になります』
やっ………たぁぁぁぁぁぁ!!!!
「はい!!!!」
感動で涙が溢れそうだった。
『では、正式に通達が流れるまでは内密に』
「はい!!」
電話を切るなり、次は航平に掛け直した。
『おめでとう』
航平は笑いながら電話に出た。嬉しさ半分先に知られていたことが悔しくなる。
「東都になった!!!知ってるの?」
『今電話かけるの横で聞いてたから』
「うそーなんでー、ずるいー、あれでしょ。2週間前から知ってたんでしょ!?」
『まあね。だけど前回もう言わないって約束したから』
航平はひょうひょうと笑っている。
「なんでよー!! こういう時は言うのが筋でしょー!!」
『ははは。良かったね。引っ越してなくて』
「もうさあ、ほんとにさあ、私さあ、めっちゃくちゃ頑張って…」
『あ、ごめん。社長だから切る』
こちらの興奮を聞くことなく切られる。
すごい……絶対すごい。絶対航平君の言う通りにしてたからだ!!すごいよ航平君……。やっぱすごい人だよ……。
東都シティを離れたのが4月。それから繁忙期を迎え、終えて9月になった。前よりも頻繁に航平は誘ってくれるようになり、月1度会って仕事のことを教え込まれたせいか、時々電話で相談したせいか、各段に今の店が良くなったことは自分でもひしひしと感じていた。
すごいなあと思う。
営業部長って。
電話では特に、悩み悩んでどうしても分からない事を整理して伝えるが、答えはほんの一言だったりする。
もしも入社してから今までずっとこんな風に仕事を教えてもらっていたら、もっと仕事ができていたのではないか、と後悔してならないし、今の力を東都で試したいという気持ちも大きくなっていっていた。
だけど。東都でカウンター副部門長で、今がランク下の店のカウンター部門長。もう一度戻るとしたら、それなりに力を付けて戻らないといけないし、それにはまだ足りない気がするし、今いる東都の野坂副部門長を押しのける力が必要だ。
「関 食事入りまーす」
トランシーバーのマイクに向かって断ってから食事に入る。もうここに関店長はいない。わざわざ関 美生と言う必要もない。いつも関さんと苗字だけで呼ばれてそれで通じるし、何も迷う必要はない。
「はあ……」
廊下を歩いてスタッフルームに入る。東都に比べると随分小さなスタッフルームだ。
突如、制服のスカートのポケットでスマホが振動し、すぐに表示画面を見る。
知らない番号だが、市外局番が東都の辺りだ。
「はい」
すぐに出る。
『お疲れ様です。本社人事部の志田です』
志田……人事副部長だ!!
「はい!」
人事だ!
『今電話大丈夫かな? 人事の話だけど、内示だから人がいない所に行ってくれる?』
「はい!!」
慌ててスタッフルームから出て、誰もいない廊下の隅に入る。
「大丈夫です!!」
『関 美生さん。10月から東都シティ本店のカウンター副部門長へ異動になります』
やっ………たぁぁぁぁぁぁ!!!!
「はい!!!!」
感動で涙が溢れそうだった。
『では、正式に通達が流れるまでは内密に』
「はい!!」
電話を切るなり、次は航平に掛け直した。
『おめでとう』
航平は笑いながら電話に出た。嬉しさ半分先に知られていたことが悔しくなる。
「東都になった!!!知ってるの?」
『今電話かけるの横で聞いてたから』
「うそーなんでー、ずるいー、あれでしょ。2週間前から知ってたんでしょ!?」
『まあね。だけど前回もう言わないって約束したから』
航平はひょうひょうと笑っている。
「なんでよー!! こういう時は言うのが筋でしょー!!」
『ははは。良かったね。引っ越してなくて』
「もうさあ、ほんとにさあ、私さあ、めっちゃくちゃ頑張って…」
『あ、ごめん。社長だから切る』
こちらの興奮を聞くことなく切られる。
すごい……絶対すごい。絶対航平君の言う通りにしてたからだ!!すごいよ航平君……。やっぱすごい人だよ……。