隠れクール上司 2 ~その素顔は君に見せはしない~
沙衣吏からの電話を待っていて結局航平にかけてしまったわけだが、当人は忘れてしまっていたのか、結局かかってこなかった。
まあ、こちらも起きて待っていたわけじゃないし。かかってきて気が付いたら出ようくらいしか考えていなかった。
今日は午後からの出社だけど、一応開店の10時前には出社して店長室で待機しておく。
と、スマホが振動し、沙衣吏がようやく電話をかけてきた。
『もしもしごめん!!! 昨日気付いたら寝ちゃってて』
全然大丈夫だ。
「大丈夫です、大丈夫。今店長室で誰もいないですし。今日は昼から出社です」
『うん。それは見てたから私も今日休みだしかけたの。昨日は大丈夫だった?』
「はい。カウンターは大丈夫でした」
『あのさ。誰かから聞いた? 野坂副部門長が異動した理由』
全く予想もしない角度から話が始まり、耳を澄ませる。
「え、知らない…ですけど。なんかあったんですか?」
『新人の若杉 風花(わかすぎ ふうか)、あの子と不倫したんだよ』
「ええええーーー!?!?」
小声で叫ぶ。
『でも、新人の方は異動にならなかったの。まあ結構仕事できる感じだしね。どっちかっていうと副部門長の方がうまくいってなかったからそれで』
「え、マジー!? うわー、どんな子なんだろ…」
『今日会わないの?』
「いや、昼から出社だから会うとは思います」
『あれは結構ヤバいよ。他の男もやられちゃうかもね』
「最悪」
『なんか話では、最初部門長狙ってたらしいよ』
「いやなんかあの人はそういうのとは無縁そうな…」
『うん。その通り! きっぱり断ってた感じだったって。絶対役職者狙いだよ』
「うわー、扱いづらいなあ…」
『いや仕事はちゃんとするからそこは大丈夫だとは思うけど。まあ、ちょっとね。関店長も独身だし…。あ、もう関係ない?』
「いや、全然関係ないことはないんですけど!! でも、そういうのってあり得ます?」
『なくはないんじゃない? 不倫じゃないし』
「まあ社内恋愛は禁止じゃないけど、そういうのダメじゃないんですか?」
『まあよくはないだろうけど。処罰とかは受けないでしょ』
そうか…普通の社員はやっぱりこういう風に思ってるんだ…。まあ、私もそう思ってたしなあ……。
「そうですね…。私も注意しときます!」
『それからさ。昨日泣いてたみたいだけど、大丈夫だったの?』
どこでそんな情報を仕入れたのか、後ろを確認したくなる。
「……いや、あれは個人的な事で……。関店長と話してて、やっとここに帰って来られたって話をしたんですけど、結局仕事の方向性がずれてるよみたいに言われて。なんか、悲しいというか、悔しい気分になって」
沙衣吏には正直に話しても大丈夫だ。沙衣吏自体は方向性が間違っていないし、ちゃんとした人だから。
『そう……まあ、アドバイスしてくれて、良かったね。鹿谷副店長がさ、ボックスティッシュの新しいの開けて、美生の前に置いてたらしいよ』
なるほど、そっちがメインか…。
「え、ティッシュ? そんなのあったかな…」
沙衣吏は清々しいほどの声で笑った。
『なんか、わざわざ備品室まで行って新しいの取って来たって。知らないんだ』
「え゛、いや、ハンカチ持ってたんで」
『美生らしいわ』
鹿谷にそういう一面があるとは思いもよらなかった。まあ、おない年という所で親近感が沸いたのだろう。副店長とはそれなりに親密にしておく必要があるし、後でお礼を言ってお近づきになっておいた方が良さそうだ。
まあ、こちらも起きて待っていたわけじゃないし。かかってきて気が付いたら出ようくらいしか考えていなかった。
今日は午後からの出社だけど、一応開店の10時前には出社して店長室で待機しておく。
と、スマホが振動し、沙衣吏がようやく電話をかけてきた。
『もしもしごめん!!! 昨日気付いたら寝ちゃってて』
全然大丈夫だ。
「大丈夫です、大丈夫。今店長室で誰もいないですし。今日は昼から出社です」
『うん。それは見てたから私も今日休みだしかけたの。昨日は大丈夫だった?』
「はい。カウンターは大丈夫でした」
『あのさ。誰かから聞いた? 野坂副部門長が異動した理由』
全く予想もしない角度から話が始まり、耳を澄ませる。
「え、知らない…ですけど。なんかあったんですか?」
『新人の若杉 風花(わかすぎ ふうか)、あの子と不倫したんだよ』
「ええええーーー!?!?」
小声で叫ぶ。
『でも、新人の方は異動にならなかったの。まあ結構仕事できる感じだしね。どっちかっていうと副部門長の方がうまくいってなかったからそれで』
「え、マジー!? うわー、どんな子なんだろ…」
『今日会わないの?』
「いや、昼から出社だから会うとは思います」
『あれは結構ヤバいよ。他の男もやられちゃうかもね』
「最悪」
『なんか話では、最初部門長狙ってたらしいよ』
「いやなんかあの人はそういうのとは無縁そうな…」
『うん。その通り! きっぱり断ってた感じだったって。絶対役職者狙いだよ』
「うわー、扱いづらいなあ…」
『いや仕事はちゃんとするからそこは大丈夫だとは思うけど。まあ、ちょっとね。関店長も独身だし…。あ、もう関係ない?』
「いや、全然関係ないことはないんですけど!! でも、そういうのってあり得ます?」
『なくはないんじゃない? 不倫じゃないし』
「まあ社内恋愛は禁止じゃないけど、そういうのダメじゃないんですか?」
『まあよくはないだろうけど。処罰とかは受けないでしょ』
そうか…普通の社員はやっぱりこういう風に思ってるんだ…。まあ、私もそう思ってたしなあ……。
「そうですね…。私も注意しときます!」
『それからさ。昨日泣いてたみたいだけど、大丈夫だったの?』
どこでそんな情報を仕入れたのか、後ろを確認したくなる。
「……いや、あれは個人的な事で……。関店長と話してて、やっとここに帰って来られたって話をしたんですけど、結局仕事の方向性がずれてるよみたいに言われて。なんか、悲しいというか、悔しい気分になって」
沙衣吏には正直に話しても大丈夫だ。沙衣吏自体は方向性が間違っていないし、ちゃんとした人だから。
『そう……まあ、アドバイスしてくれて、良かったね。鹿谷副店長がさ、ボックスティッシュの新しいの開けて、美生の前に置いてたらしいよ』
なるほど、そっちがメインか…。
「え、ティッシュ? そんなのあったかな…」
沙衣吏は清々しいほどの声で笑った。
『なんか、わざわざ備品室まで行って新しいの取って来たって。知らないんだ』
「え゛、いや、ハンカチ持ってたんで」
『美生らしいわ』
鹿谷にそういう一面があるとは思いもよらなかった。まあ、おない年という所で親近感が沸いたのだろう。副店長とはそれなりに親密にしておく必要があるし、後でお礼を言ってお近づきになっておいた方が良さそうだ。