にせもの王子さま
エレベーターがとまり、事務所の入る13階に着いたことを知らせる音がなった。
扉を押さえ、水上さんに先に降りてもらう。

13階のフロアを、うちの会社と、他の2つの会社、合計3つの会社が分けて使っていて、うちの事務所は3つに分けた一番奥にあるので、エレベーターホールからは少し歩くようになる。

水上さんと並んで歩きながら、ふと思い出す。

「そういえば、あれから遥さんの様子はどうですか?」

スカウトの話をしていたら、水上さんの担当している女優の岸本遥さんのことが頭に浮かんだのだ。

遥さんも水上さんと同じように、社長がスカウトしてきた人材。そして、うちの看板女優だ。
看板女優といっても、年齢は私と同い年。
目立つ容姿にくわえて、同年代のどの女優よりズバ抜けて演技力が高く、デビュー作からいきなり色んな新人賞を総ナメにした。
すごいの拾っちゃった!って、社長も期待していたみたいだけど・・・。
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