にせもの王子さま
「何? この後人と会う予定があるから、急いでるんだけど」

言いながら、左手を社長室の扉のドアノブにかける。

「あ、すみません。とりあえずですけど、スカウトに成功したのでご報告を・・・」

「えっ!? アンタ、誰か捕まえたの!?」

まだ言い終わらないうちに、目を見開いた社長が被せてくる。

「はい。大学生の・・・」

「やるじゃないの、関口! 褒めてあげるわ!」

また被せてきた。
もう。ちゃんと聞く気、ないじゃん・・・。

それでも嬉しいのか、社長は弾んだ声で続けた。

「とりあえず、面談の日を決めてちょうだい。スケジュールは坂口に聞いて、相手方と調整して。決まったら、坂口に報告しといてね」

そして社長室に入って、ジャケットを手に一瞬で出てくる。

「じゃあね! 今日はもう戻らないから、坂口、後は頼んだわよ!」

それだけ言い残し、また外へと出ていった。
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