にせもの王子さま
「わぁぁ、もうダメだー!」

デスクに倒れ込みながらの私の突然の大声に、デスクの近くにいた先輩達がビクッとしたのが目に入った。
慌てて「すみません」と言ったものの、でもやっぱり余裕がなくて。

やっぱり、1度撮影さえしてしまえばこっちのものだろ、何とかなるだろ!とか甘い事思ってたから?

面談の日まであと2週間もあるのに。
日が経つごとに、マイナスな考えしか浮かばない。
もういっそのこと、今日が面談の日ならいいのに・・・。

変な緊張が毎日続く。

この感じ、小学生の頃にピアノの検定を受けた時みたい。
その日の自分の番がくるまで、指先までがしびれるぐらいに、ひたすらドキドキした感じ。

あぁ、駆け出しのタレントさんは、オーディションを受ける時、いつもこんな気持ちなのかな、などとぼんやり思う。

そしてーーー面談の日が、本当に私を変えてしまうとは、この時はまだ知らなかった。
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