にせもの王子さま
プルル、と呼び出す音がする。
今携帯の着信音が鳴った人が悠さんのはず!と思ったけど、さすが大学生。あっちこっちで色んな着信音や通知音が鳴っている。

プルル、とコールする音がやたらと冷たく聞こえる。
心臓がギュッと縮まったような痛みを覚え、携帯を持つ手が冷や汗で滑りそうになる。

何で出てくれないの!?


プッ・・・。


急にコールの音が切れて、携帯からも店内の騒がしい音が聞こえてきた。

「もっ、もしもし!?」

携帯に噛み付く勢いで話しかける。

「もしもし、小野原です」

聞こえてきたのは初めて会った時と同じ、ちょっと高めだけど、柔らかい印象の声。
電話越しだと、直接聞くよりももう少し低く聞こえる。
面談の日程を調整した時は、ずっとメールでやり取りしてたから、電話越しの声を聞いたのは初めてだった。
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