にせもの王子さま
でも、これからどんな課題を与えられるのか。
周りがぼやけていく事で、自分の目に涙がたまってきているのが分かった。

でも、ここで泣いちゃダメだ。

私は涙がこぼれてしまわないように目に力を入れて見開き、社長の言葉を待った。

「じゃあね、アンタがいいなと思った子を何人か連れてきてちょうだい。期限はそうねぇ・・・1週間ね」

えっ・・・。

思わず固まってしまう。
それはもしかして、1週間以内にスカウトしてこいって事!?

「そんな! 無理ですうぅぅ!」

スカウトなんかした事ないよ!
しかも、何人もなんて、無理! 無理だよ!!

「あら、じゃあいいのよ。自己都合での退社という事ね」

社長が顎をツンとあげたので、ますます見下ろされる格好になる。

「そんな! それは困りますぅ!!」

先程よりも目の前が滲んで行く。
涙が溢れそうになるのを、必死で堪えた。
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