異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「わかった、今回は私が行くわ。でも、今日の湊くんの部屋持ちはあなたよ。だから次にこういうことがあったら、関わることから逃げないでほしいの」
部屋持ちは、その日に自分が任された部屋の患者を受け持つ看護師のことだ。その部屋持ちの看護師が患者に踏み込むことを恐れていてはいけない。彼女には自分が傷ついても、患者のために歩み寄れる看護師でいてほしいと思う。
「先輩……はい、ありがとうございます」
頭を下げる彼女に笑みを返して、私はすぐに二百三室へ向かう。湊くんの家は共働きで、こんなときだというのに面会にはほとんど来ない。
部屋も個室なので、きっと寂しい思いをしている。
私は病室の扉をノックして「湊くん、入るわね」と声をかけた。すぐに返事があって入室すると、湊くんの儚げな笑顔が私を出迎える。
「若菜お姉さん、今日はお仕事の日なんだね」
癖のある茶髪に、日本人にしては色素の薄いブラウンの瞳。彼は十六歳という若さで、余命三か月を言い渡されている癌患者だ。
「ええ、だから困ったことがあったらいつでも言ってね」
他の看護師は苗字にさん付けをして呼ぶのに、湊くんは私を若菜お姉さんと呼ぶ。
今は患者はお客様という精神で適度な距離を取りながら看護に従事するよう教わるが、必ずしもそれが正しいとは思わない。辛いとき、悲しいとき、そばにいてほしいのは親しみやすい看護師のはずだから。
「さっき看護師さんが検温に来たけど、若菜さんまでどうしたの? もしかして僕、そんなに頻繁に様子を見なきゃいけないほど病気が悪化してるとか?」
そう言った湊くんは笑っているけれど、瞳は不安に揺れている。湊くんはどうも、辛いときほど笑おうとする性格らしい。
「ううん、そうじゃないの。不安にさせてごめんなさい。ただ、食事をあまり摂ってないみたいだから心配になって」
ベットに上半身を起こして座っている湊くんの隣に丸椅子を持っていくと、私はそこに腰を下ろした。
部屋持ちは、その日に自分が任された部屋の患者を受け持つ看護師のことだ。その部屋持ちの看護師が患者に踏み込むことを恐れていてはいけない。彼女には自分が傷ついても、患者のために歩み寄れる看護師でいてほしいと思う。
「先輩……はい、ありがとうございます」
頭を下げる彼女に笑みを返して、私はすぐに二百三室へ向かう。湊くんの家は共働きで、こんなときだというのに面会にはほとんど来ない。
部屋も個室なので、きっと寂しい思いをしている。
私は病室の扉をノックして「湊くん、入るわね」と声をかけた。すぐに返事があって入室すると、湊くんの儚げな笑顔が私を出迎える。
「若菜お姉さん、今日はお仕事の日なんだね」
癖のある茶髪に、日本人にしては色素の薄いブラウンの瞳。彼は十六歳という若さで、余命三か月を言い渡されている癌患者だ。
「ええ、だから困ったことがあったらいつでも言ってね」
他の看護師は苗字にさん付けをして呼ぶのに、湊くんは私を若菜お姉さんと呼ぶ。
今は患者はお客様という精神で適度な距離を取りながら看護に従事するよう教わるが、必ずしもそれが正しいとは思わない。辛いとき、悲しいとき、そばにいてほしいのは親しみやすい看護師のはずだから。
「さっき看護師さんが検温に来たけど、若菜さんまでどうしたの? もしかして僕、そんなに頻繁に様子を見なきゃいけないほど病気が悪化してるとか?」
そう言った湊くんは笑っているけれど、瞳は不安に揺れている。湊くんはどうも、辛いときほど笑おうとする性格らしい。
「ううん、そうじゃないの。不安にさせてごめんなさい。ただ、食事をあまり摂ってないみたいだから心配になって」
ベットに上半身を起こして座っている湊くんの隣に丸椅子を持っていくと、私はそこに腰を下ろした。