むかつく後輩に脅されています。
「二人とも恋人いないし、先輩は微妙なやつから告られたとき彼氏いる、って断れるじゃないすか」
「告られることがないから必要ないわ」
「そんなことないです、先輩綺麗だし」
「はいはい」
私はコーヒーカップを置いて、パソコンに向き直る。
「早く帰りなさい。明日もあるんだから」
「先輩つめたい。俺、彼氏なのに」
「ごめんなさいね。構ってくれる優しい子と付き合いなさい」
カタカタキーボードを叩いていたら、目の前にスマホが差し出された。私が描いたBL漫画の画像がでかでかと待ち受けになっている。
「!」
私はスマホを掴もうとする。相楽はさっ、とスマホを引いて、ニヤニヤ笑う。
「パソコンの壁紙にもしちゃおっかなあー」
「この……なにがしたいのよ、あなたは」
「さよならのキスがしたいです」
「この世から永遠にさよならしたいなら叶えてあげるわよ」
私はキーボードを構えた。
「ちょ、備品壊しちゃまずいっすよ」
相楽は自身の頰を指差した。
「ほっぺでいいから。ね?」
私は相楽を睨みつけ、彼の襟首を引っ張った。背伸びして、頰に触れるだけのキスをする。相楽はじっとこちらを見て、ニコッと笑う。
「へへ。先輩とキスしちゃった」
「は……はやくかえりなさい」
「はぁい」
相楽はご機嫌で帰っていく。
「……なによ、あの笑顔。ほんとムカつく」
暗いパソコン画面に映り込んだ私の顔は、トマトみたいに真っ赤だった。
★
相楽の彼女(?)になってから三日。本日は国民の休日である。今日ばかりは何かとまとわりついてくるうざい後輩に会わなくて済む。
そして、絶好の作業日でもある。
私はヘアバンドで髪をまとめ、すっぴんプラス部屋着姿で原稿を描いていた。けして同僚には見せられない姿だ。しかし、私はこうやって漫画を描いている時が一番幸せだ。いい表情が描けて満足していたその時、スマホが鳴り響いた。
「告られることがないから必要ないわ」
「そんなことないです、先輩綺麗だし」
「はいはい」
私はコーヒーカップを置いて、パソコンに向き直る。
「早く帰りなさい。明日もあるんだから」
「先輩つめたい。俺、彼氏なのに」
「ごめんなさいね。構ってくれる優しい子と付き合いなさい」
カタカタキーボードを叩いていたら、目の前にスマホが差し出された。私が描いたBL漫画の画像がでかでかと待ち受けになっている。
「!」
私はスマホを掴もうとする。相楽はさっ、とスマホを引いて、ニヤニヤ笑う。
「パソコンの壁紙にもしちゃおっかなあー」
「この……なにがしたいのよ、あなたは」
「さよならのキスがしたいです」
「この世から永遠にさよならしたいなら叶えてあげるわよ」
私はキーボードを構えた。
「ちょ、備品壊しちゃまずいっすよ」
相楽は自身の頰を指差した。
「ほっぺでいいから。ね?」
私は相楽を睨みつけ、彼の襟首を引っ張った。背伸びして、頰に触れるだけのキスをする。相楽はじっとこちらを見て、ニコッと笑う。
「へへ。先輩とキスしちゃった」
「は……はやくかえりなさい」
「はぁい」
相楽はご機嫌で帰っていく。
「……なによ、あの笑顔。ほんとムカつく」
暗いパソコン画面に映り込んだ私の顔は、トマトみたいに真っ赤だった。
★
相楽の彼女(?)になってから三日。本日は国民の休日である。今日ばかりは何かとまとわりついてくるうざい後輩に会わなくて済む。
そして、絶好の作業日でもある。
私はヘアバンドで髪をまとめ、すっぴんプラス部屋着姿で原稿を描いていた。けして同僚には見せられない姿だ。しかし、私はこうやって漫画を描いている時が一番幸せだ。いい表情が描けて満足していたその時、スマホが鳴り響いた。