むかつく後輩に脅されています。
「ん〜、ゆり先輩〜」
私はぴたりと動きを止めた。
「やめてくださいよ、いてっ、うわっ、それ投げたら死にますって」
どんな夢を見てるんだ、こいつは。
「ちょっと相楽、こんなとこで寝ないで」
彼を起こそうと肩に触れたら、その手を掴まれた。
「!」
片腕で引き寄せられて、相楽との距離が縮まる。私を見つめる、相楽の瞳が緩んだ。
「あ、あんた起きてたの」
「先輩、すっぴんでも美人ですね」
質問に答えなさいよ。そう言う前に、相楽の唇が近づいてくる。私は慌てて、彼の頭をおさえた。
「なにしてるのよ」
「だって俺たちカレカノだし。キスくらい普通でしょ」
唇が近づいてくる。私はぎゅっと目を瞑った。──ちゅっ。
相楽の唇は、額に落ちた。おそるおそる瞳を開いたら、彼はじっとこちらを見ていた。目が合うと、嬉しそうに笑う。
「先輩のおでこ、すごい可愛い」
「……っ」
私は真っ赤になって、相楽を押しのけた。
玄関に向かった相楽は、私に手を振る。
「じゃあまた月曜日に」
「明日もあんたに会わなきゃいけないなんて最悪」
私は目をそらしながら言った。
「俺は嬉しいです。先輩とずっといっしょにいられて」
「うるさい。はやく帰りなさいよ」
「はぁい」
相楽が出ていって、私はずるずる体勢を崩した。ドクドクと心臓が鳴り響いている。
──あぶなかった。
あんなの、あいつは慣れっこなんだろう。キスも、もちろんそれ以上も。
「……ばか……」
相楽にキスされた額が、妙にじんじんとしびれていた。
★
翌朝、エレベーターに乗り込むと、松葉杖をついた男が私に続いた。
「先輩、おはようございます」
「お……はよう」
私はじりじりと相楽から離れた。相楽が不思議そうにこちらを見る。
「なんで離れるんすか?」
「べつに」
相楽は私にひょこひょこ寄ってきて、顔を覗き込んだ。
私はぴたりと動きを止めた。
「やめてくださいよ、いてっ、うわっ、それ投げたら死にますって」
どんな夢を見てるんだ、こいつは。
「ちょっと相楽、こんなとこで寝ないで」
彼を起こそうと肩に触れたら、その手を掴まれた。
「!」
片腕で引き寄せられて、相楽との距離が縮まる。私を見つめる、相楽の瞳が緩んだ。
「あ、あんた起きてたの」
「先輩、すっぴんでも美人ですね」
質問に答えなさいよ。そう言う前に、相楽の唇が近づいてくる。私は慌てて、彼の頭をおさえた。
「なにしてるのよ」
「だって俺たちカレカノだし。キスくらい普通でしょ」
唇が近づいてくる。私はぎゅっと目を瞑った。──ちゅっ。
相楽の唇は、額に落ちた。おそるおそる瞳を開いたら、彼はじっとこちらを見ていた。目が合うと、嬉しそうに笑う。
「先輩のおでこ、すごい可愛い」
「……っ」
私は真っ赤になって、相楽を押しのけた。
玄関に向かった相楽は、私に手を振る。
「じゃあまた月曜日に」
「明日もあんたに会わなきゃいけないなんて最悪」
私は目をそらしながら言った。
「俺は嬉しいです。先輩とずっといっしょにいられて」
「うるさい。はやく帰りなさいよ」
「はぁい」
相楽が出ていって、私はずるずる体勢を崩した。ドクドクと心臓が鳴り響いている。
──あぶなかった。
あんなの、あいつは慣れっこなんだろう。キスも、もちろんそれ以上も。
「……ばか……」
相楽にキスされた額が、妙にじんじんとしびれていた。
★
翌朝、エレベーターに乗り込むと、松葉杖をついた男が私に続いた。
「先輩、おはようございます」
「お……はよう」
私はじりじりと相楽から離れた。相楽が不思議そうにこちらを見る。
「なんで離れるんすか?」
「べつに」
相楽は私にひょこひょこ寄ってきて、顔を覗き込んだ。