幻獣サーカスの調教師
剣舞に紛れた殺意
ノエンがショーに出る日がやって来た。
想像していたよりもずっと客受けが良く、彼がおちゃらけたり、時々わざと転んでどじっぷりを見せたりすると、会場は笑いに包まれる。
そう、ピエロは笑われるためにいるのだと、改めて思う光景だ。
そして、皆に笑われながら、ノエンも笑うその姿に、何故か胸が痛んだ。
彼もまた、自分と同じように、ショーをしていても楽しくないと思っているのではないかと思うのだ。
けれども、ノエンとルルには明らかな違いがある。
彼の腕にも、首にも、団長の所有物である証がないのだから。
今、団長の所有物である証を着けているのは、自分を除けばエルフの数名だけ。
幻獣達のは、ルルが外してほしいと頼んだのだから、してないのは当たり前だが。
何故、ノエンには何も着けなかったのだろうか?
「……団長さんは、何を考えてるのかしら?」
ラッドの頬を撫でて、ぼんやりと呟く。
(勿論、ノエンさんが爆弾を付けられなかったのはいいことだと思うけど……)
けれども、何か引っ掛かった。
だが、その違和感の正体が全く分からない。
(私が幻獣の調教師になってから、団長さんとは事務的な会話しか交わしてないわ。……団長さんは、年々私に距離を置くようになった)
元々、団長から親の愛など期待していない。だから、心に距離があろうが、今更気にしない。
けれども、ノエンと良く話をしている姿は見掛けていた。
何の話をしているのかは分からないが、ノエンと話してる時の団長は、何だか楽しそうなのだ。
楽しそうと言うよりも、にやっと口端をあげた、嫌な笑みと言うべきだろう。
悪巧みをしている時や、団長にとって得なことがある時は、良くああいう笑みを浮かべている。
だが、何故ノエンと話をしていて、そんな笑みを浮かべるのかは理解不能だ。
「……おい」
不機嫌そうな声も、ルルの耳には入ってこない。
(団長さん。ノエンさんに何か悪いことしなきゃいいけど)
「……おい、タワシ」
(もしノエンさんに何かあったら……)
「………………」
全くこちらに反応を返さないルルの背中を見ながら、リュートはつまらなそうに眉を潜める。
ノエンが来てから、ルルはリュートの嫌味にも、あまり反応を示さなくなった。
それに、時間があればすぐノエンの元に行き、ノエンが練習している時も、ちらっと見ては嬉しそうに笑っている。
本人は気付いてないようだが、回り(特にリュートから)見れば気持ちはバレバレだ。
(……あんな胡散臭い奴の何がいいんだ?)
最初からニコニコ笑って近寄ってくる人間に、ろくなやつはいないだろうとリュートは思う。
想像していたよりもずっと客受けが良く、彼がおちゃらけたり、時々わざと転んでどじっぷりを見せたりすると、会場は笑いに包まれる。
そう、ピエロは笑われるためにいるのだと、改めて思う光景だ。
そして、皆に笑われながら、ノエンも笑うその姿に、何故か胸が痛んだ。
彼もまた、自分と同じように、ショーをしていても楽しくないと思っているのではないかと思うのだ。
けれども、ノエンとルルには明らかな違いがある。
彼の腕にも、首にも、団長の所有物である証がないのだから。
今、団長の所有物である証を着けているのは、自分を除けばエルフの数名だけ。
幻獣達のは、ルルが外してほしいと頼んだのだから、してないのは当たり前だが。
何故、ノエンには何も着けなかったのだろうか?
「……団長さんは、何を考えてるのかしら?」
ラッドの頬を撫でて、ぼんやりと呟く。
(勿論、ノエンさんが爆弾を付けられなかったのはいいことだと思うけど……)
けれども、何か引っ掛かった。
だが、その違和感の正体が全く分からない。
(私が幻獣の調教師になってから、団長さんとは事務的な会話しか交わしてないわ。……団長さんは、年々私に距離を置くようになった)
元々、団長から親の愛など期待していない。だから、心に距離があろうが、今更気にしない。
けれども、ノエンと良く話をしている姿は見掛けていた。
何の話をしているのかは分からないが、ノエンと話してる時の団長は、何だか楽しそうなのだ。
楽しそうと言うよりも、にやっと口端をあげた、嫌な笑みと言うべきだろう。
悪巧みをしている時や、団長にとって得なことがある時は、良くああいう笑みを浮かべている。
だが、何故ノエンと話をしていて、そんな笑みを浮かべるのかは理解不能だ。
「……おい」
不機嫌そうな声も、ルルの耳には入ってこない。
(団長さん。ノエンさんに何か悪いことしなきゃいいけど)
「……おい、タワシ」
(もしノエンさんに何かあったら……)
「………………」
全くこちらに反応を返さないルルの背中を見ながら、リュートはつまらなそうに眉を潜める。
ノエンが来てから、ルルはリュートの嫌味にも、あまり反応を示さなくなった。
それに、時間があればすぐノエンの元に行き、ノエンが練習している時も、ちらっと見ては嬉しそうに笑っている。
本人は気付いてないようだが、回り(特にリュートから)見れば気持ちはバレバレだ。
(……あんな胡散臭い奴の何がいいんだ?)
最初からニコニコ笑って近寄ってくる人間に、ろくなやつはいないだろうとリュートは思う。