幻獣サーカスの調教師
刀を構えたノエンと、剣を構えたリュートが舞台に上がると、観客は拍手を送る。

「はっ!」

「っ!」

ノエンが演奏と共に走り出し、トランポリンに飛び乗って高く飛び上がると、リュートも同じように飛び上がる。

鞘から刀を引き抜き、見えない敵を切るかのように横へなぎ払うノエン。

剣を上へと突き上げ、体を捻り横へと回転し、トランポリンの上に降りたリュート。

二人の舞いに、人々は息を殺すように眺めていた。

そして、リュートとノエンが同時に飛び上がり、同じくらいの高さに達する。

「……リュートくんは、ルルさんが好きですか?」

目の前に来たノエンが、どこか探るようにこちらを見ていることに、リュートは知らず顔をしかめていた。

「可愛らしい方ですが、少し危ういところがありますね。幻獣と人間が同じだと思っているみたいです」

「……」

「……幻獣など、家畜にすらなれないというのに」

「!」

ノエンのどこか皮肉げな笑みを見た瞬間、リュートの頭の中がカッと熱くなった。

そして、勢いに任せ剣をノエンへと振り下ろす。

だが、ノエンはリュートの剣を受け止め、再びニコリと笑みを浮かべる。

「おい、今の当たったらヤバかったんじゃねぇか?」

「ああ。本気で当てる気みたいだったな」

観客のざわついた声に、ちらっと視線を送ってから、ノエンはリュートを見直す。

「……駄目ですよ?今は演義中なのですから」

「……チッ」

小さく舌打ちをすると、二人の体はトランポリンへと落ちた。

リュートはその後、宙返りをしてもう一度飛び上がると、ノエンを睨む。

ノエンはただ笑ってリュートを見上げてから、トランポリンを降りて、刀に左手を添えて舞う。

リュートも空中で剣を放り投げ、トランポリンに着地すると同時に剣を受け止めた。

そして、二人同時に頭を下げると、また大きな歓声と拍手が会場を包んだ。

「素晴らしい!皆さん、もう一度二人に拍手を!」

団長の声に、観客達はまた大きく手を叩き、耳に痛い音が何時までも鳴り響いていた。
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