幻獣サーカスの調教師
幻獣使いとなるために、ルルはさっそくマンティコア(因みに名前はラッド)に餌を食べさせようとした。
けれども、ラッドは威嚇をして近付けさせてもらえない。
震える体を押さえ付けるように一歩踏み出すと、勢い良く檻に体をぶつけるので、驚いて後ろにひっくり返ってしまった。
相当怯えているのだろう。
けれども、餌を食べられなければ飢え死にしてしまうし、ルルも死んでしまう。
なんとかしなければとは思うのだが。
(他の幻獣達を観察してみれば、何か手掛かりがあるかな?)
他の幻獣達はラッドと違って大人しいと団長は話していた。
ルルは幻獣達の部屋へと行く。
大きな水槽の中に入っている人魚が、更に檻の中にも入っているというのは、奇妙な光景だ。
そして観察して気付いたのは、幻獣達の首には、首輪が付いているということだ。
(ラッドの首には、何も着いてなかったのに。……これ、何だろう?)
人魚の首輪をジッと見てみたが、何の変哲もないので、特に手掛かりにはならなそうだ。
(とにかく、私に慣れてもらわないと)
警戒心の強い猫も、自分が近付くとすぐに逃げてしまった。
餌付けをして、ようやく撫でさせてもらえたが。
しかし、ラッドはそもそも近寄らせてすらもらえないのだ。
ルルがいても安心出来るようにしなければ。
「……新入りか」
「え?」
話し掛けられるとは思ってなかったので、ルルは慌てて回りを見回した。
すると、隅の方の檻の中に、膝を抱え込んで座っている人間がいる。
「君、誰?」
近寄ってみると、違和感に気付いた。
自分と同じくらいの少年が、他の幻獣達と同じように首には首輪が付けられていた。
それに、耳も少し尖っているし、目も緋色だ。
自分とは少し違う姿に、ルルは首を傾げた。
「どうして檻の中にいるの?」
「……話しかけるな人間の癖に」
「むっ。そっちが先に話しかけてきたんでしょう?」
少なくとも、こちらから声をかけた覚えは無い。
「お前、新しい幻獣使いだろ」
「……」
ルルが無言で少年を見ると、それが答えだと思った少年は笑った。
とても、皮肉げに。
「馬鹿だな。お前みたいな人間が、あいつを従えられるなど本気で思ってるのか?こんな首輪で縛ったところで、お前達はあいつに殺されるんだ。無様だな」
「……」
正直、ルルはとても腹が立った。
恐らく少年は、ここで相当酷い扱いを受けているのだろう。だが、そんなことに気をかけられるほど、ルルは余裕があるわけではない。
今、ルルは自分とラッドのことを考えるので一杯だったのだ。
「何で、あんたなんかにそんなこと言われなきゃいけないの?私は、好きで幻獣使いになるわけじゃないのに!私は、生きたいだけなのに!!」
少年のことを、ルルは嫌った。だから、すぐに部屋から出て、ラッドの所へ行った。
怒りで頭に血が上ったせいか、ラッドの威嚇にも怯えることなく、無理矢理近付いて檻の前に座り込む。
届かないと知っているから、ルルはふんぞり返ってラッドを見ていた。
(絶対に、幻獣使いになってやるもん)
「……あの子、私嫌い」
いきなりサーカスに売られ、団長からは冷たい目で見下ろされ、ラッドに威嚇され、少年にも邪険にされる。
一体何なのだろうと苛立つと共に、寂しくなる。
「……コロコロコロリン、何処へ行く~♪」
子守歌代わりに聞いた「卵の歌」。それはこの国よりもずっと遥か向こうにあると言われている国の龍の歌。
昔は歌詞が違っていて、最終的に食べられる歌詞だったらしいが、今では転がる卵を「輪廻の輪」に例えているらしい。
「お母さんが言ってたの。この歌が伝わっている国には昔、龍と仲の良い民がいたんだって」
独り言のようにルルは呟いた。
けれども、ラッドは威嚇をして近付けさせてもらえない。
震える体を押さえ付けるように一歩踏み出すと、勢い良く檻に体をぶつけるので、驚いて後ろにひっくり返ってしまった。
相当怯えているのだろう。
けれども、餌を食べられなければ飢え死にしてしまうし、ルルも死んでしまう。
なんとかしなければとは思うのだが。
(他の幻獣達を観察してみれば、何か手掛かりがあるかな?)
他の幻獣達はラッドと違って大人しいと団長は話していた。
ルルは幻獣達の部屋へと行く。
大きな水槽の中に入っている人魚が、更に檻の中にも入っているというのは、奇妙な光景だ。
そして観察して気付いたのは、幻獣達の首には、首輪が付いているということだ。
(ラッドの首には、何も着いてなかったのに。……これ、何だろう?)
人魚の首輪をジッと見てみたが、何の変哲もないので、特に手掛かりにはならなそうだ。
(とにかく、私に慣れてもらわないと)
警戒心の強い猫も、自分が近付くとすぐに逃げてしまった。
餌付けをして、ようやく撫でさせてもらえたが。
しかし、ラッドはそもそも近寄らせてすらもらえないのだ。
ルルがいても安心出来るようにしなければ。
「……新入りか」
「え?」
話し掛けられるとは思ってなかったので、ルルは慌てて回りを見回した。
すると、隅の方の檻の中に、膝を抱え込んで座っている人間がいる。
「君、誰?」
近寄ってみると、違和感に気付いた。
自分と同じくらいの少年が、他の幻獣達と同じように首には首輪が付けられていた。
それに、耳も少し尖っているし、目も緋色だ。
自分とは少し違う姿に、ルルは首を傾げた。
「どうして檻の中にいるの?」
「……話しかけるな人間の癖に」
「むっ。そっちが先に話しかけてきたんでしょう?」
少なくとも、こちらから声をかけた覚えは無い。
「お前、新しい幻獣使いだろ」
「……」
ルルが無言で少年を見ると、それが答えだと思った少年は笑った。
とても、皮肉げに。
「馬鹿だな。お前みたいな人間が、あいつを従えられるなど本気で思ってるのか?こんな首輪で縛ったところで、お前達はあいつに殺されるんだ。無様だな」
「……」
正直、ルルはとても腹が立った。
恐らく少年は、ここで相当酷い扱いを受けているのだろう。だが、そんなことに気をかけられるほど、ルルは余裕があるわけではない。
今、ルルは自分とラッドのことを考えるので一杯だったのだ。
「何で、あんたなんかにそんなこと言われなきゃいけないの?私は、好きで幻獣使いになるわけじゃないのに!私は、生きたいだけなのに!!」
少年のことを、ルルは嫌った。だから、すぐに部屋から出て、ラッドの所へ行った。
怒りで頭に血が上ったせいか、ラッドの威嚇にも怯えることなく、無理矢理近付いて檻の前に座り込む。
届かないと知っているから、ルルはふんぞり返ってラッドを見ていた。
(絶対に、幻獣使いになってやるもん)
「……あの子、私嫌い」
いきなりサーカスに売られ、団長からは冷たい目で見下ろされ、ラッドに威嚇され、少年にも邪険にされる。
一体何なのだろうと苛立つと共に、寂しくなる。
「……コロコロコロリン、何処へ行く~♪」
子守歌代わりに聞いた「卵の歌」。それはこの国よりもずっと遥か向こうにあると言われている国の龍の歌。
昔は歌詞が違っていて、最終的に食べられる歌詞だったらしいが、今では転がる卵を「輪廻の輪」に例えているらしい。
「お母さんが言ってたの。この歌が伝わっている国には昔、龍と仲の良い民がいたんだって」
独り言のようにルルは呟いた。