幻獣サーカスの調教師
(……ノエンさん)
雨に濡れるノエンの姿を、ルルはただ見ていることしか出来なかった。
リュートから貰った耳当てのおかげで、鏡を見るのがそこまで苦ではなくなったが、それでも、前の自分ではない気がして、悲しくなる。
あれから、何故かノエンの顔をまともに見ることが出来ない。
彼の目から写る自分は、どんな風なのだろうと想像すると、前のように弾んだ気持ちでノエンの側にいられない。
そのくせ、ノエンの側に居たいと思っている。
正反対の気持ちを、矛盾を抱えていた。
(……私……どうしたいの?)
自分が何をしたかったのか、それすらもう分からない。
他の幻獣達は、ラッドよりも聞き分けが良いから、今のところルルの手を焼かすような子はいない。
ラッドとの間に壁が出来たあの日から、ルルは幻獣という生き物を、心のどこかで恐れるようになった。
本当は、本音を言ってしまえば、もう「幻獣の調教師」でいたくなかった。
けれども、ルルはラッドの側にいる道を選んだ。
それは、酷く辛い道だと知りながら。
(私はラッドを恐れながら……ラッドをまだ大切にしたいんだわ)
例え前と同じように接することが出来なくても、ラッドを拒絶したいと思いながらも。
それでも、ルルは簡単にラッドを切り捨てることなど出来ない。
何故なら、ルルの心の奥深くに「ラッド」と言う存在が刻み込まれているのだ。
そうなるだけの時間を、共に過ごしてきたのだから。
(……だから、私は最後までラッドと居るわ)
ラッドが死ななければいけないと言うのならば、ルル自身も命を差し出すべきだと思った。
(……ねぇ、ノエンさん)
ルルは心の中でノエンへと声をかける。
(貴方が私を可愛いと言ってくれた時、お世辞だったとしても本当に嬉しかったの)
自分の器量は、自分でも良く分かっている。
それでも、純粋に嬉しかった。
(……好きよ。私、貴方が好きです)
けして口に出すことなく、ルルは悲しげに微笑んだ。
この言葉と気持ちは、死んだ後も自分だけで背負おう。
そう誓った。
雨に濡れるノエンの姿を、ルルはただ見ていることしか出来なかった。
リュートから貰った耳当てのおかげで、鏡を見るのがそこまで苦ではなくなったが、それでも、前の自分ではない気がして、悲しくなる。
あれから、何故かノエンの顔をまともに見ることが出来ない。
彼の目から写る自分は、どんな風なのだろうと想像すると、前のように弾んだ気持ちでノエンの側にいられない。
そのくせ、ノエンの側に居たいと思っている。
正反対の気持ちを、矛盾を抱えていた。
(……私……どうしたいの?)
自分が何をしたかったのか、それすらもう分からない。
他の幻獣達は、ラッドよりも聞き分けが良いから、今のところルルの手を焼かすような子はいない。
ラッドとの間に壁が出来たあの日から、ルルは幻獣という生き物を、心のどこかで恐れるようになった。
本当は、本音を言ってしまえば、もう「幻獣の調教師」でいたくなかった。
けれども、ルルはラッドの側にいる道を選んだ。
それは、酷く辛い道だと知りながら。
(私はラッドを恐れながら……ラッドをまだ大切にしたいんだわ)
例え前と同じように接することが出来なくても、ラッドを拒絶したいと思いながらも。
それでも、ルルは簡単にラッドを切り捨てることなど出来ない。
何故なら、ルルの心の奥深くに「ラッド」と言う存在が刻み込まれているのだ。
そうなるだけの時間を、共に過ごしてきたのだから。
(……だから、私は最後までラッドと居るわ)
ラッドが死ななければいけないと言うのならば、ルル自身も命を差し出すべきだと思った。
(……ねぇ、ノエンさん)
ルルは心の中でノエンへと声をかける。
(貴方が私を可愛いと言ってくれた時、お世辞だったとしても本当に嬉しかったの)
自分の器量は、自分でも良く分かっている。
それでも、純粋に嬉しかった。
(……好きよ。私、貴方が好きです)
けして口に出すことなく、ルルは悲しげに微笑んだ。
この言葉と気持ちは、死んだ後も自分だけで背負おう。
そう誓った。