幻獣サーカスの調教師
月白国という国では昔、龍は人に飼われていた。

けれども、神に等しい龍がいなくなった後、新しい王が龍達を解放し、暫くは人と龍は別れて暮らしていた。

そして、長い年月を得て、人と龍は同盟という形で繋がったそうだ。

「人と龍が仲良く出来るなら、私とラッドだって、仲良くなれるよね?」

そう呟いてから、ふと良いことを思い付いた。


小道具が置いてある部屋に入ると、がさごそと辺りを探る。

ちゃんと元に戻しておけばいいし、今は急がなければ。

「あ!やっぱりあった!」

昔の記憶を辿り、サーカスで使われていた楽器を取り出す。

父がまだ調律師をやっていた頃、ルルは楽器の扱い方を教わった。

才能があったのかは知らないが、ルルはピアノがとても得意だった。

ピアノとこれは、似ているがまた別物だ。弾けるかどうかは分からない。

だが、出来るか出来ないかの問題ではなく、やるしかないのだ。

龍の話で思い出したのは、最初の王が神に等しい龍を操ったお話。

王は龍に歌を聞かせたとおとぎ話にあった。

勿論、それが本当かどうかは分からない。

(これは、本当に賭けだ)

だが、試せるものは何でも試したいのだ。

ルルは重たいその楽器を持って、ラッドの所まで戻った。
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