リストカット
翔太が今居る西山中学校と兄弟校である北山中学校に翔太は向かっていた。
「久しぶりだな、北山中」
職員玄関にあるインターフォンを鳴らすと、「はい?」という事務員の声が聞こえた。
「西山中学校の山本です」
「ああ、山本先生ですか。久しぶりですね。ところで何の用ですか?」
「以前に西山中学校に居た篠原先生という人を探しています」
「じゃあ、今呼びますね」
そう言って、事務員の女性は教務室の方へ向かった。
「栞奈の好きな人か……会うのは怖い……」
そうしているうちに足音が聞こえてきた。
「私に何か用ですか?」
眼鏡を着けていて、優しそうな同世代の先生だった。
「初めまして。篠原裕也です」
「山本翔太です。急に来て、すいません」
「いえいえ。大丈夫ですよ」
篠原先生――裕也の笑顔はとても素敵で、栞奈が惚れてしまうのは分かってしまう気がした。
「あの……松山さんって覚えてます?」
「覚えてますよ。松山栞奈さんですよね?」
「はい。彼女のことで相談がありまして……」
「立ち話はやめて、会議室に行きましょうか」
「はい……」
彼の優しさに敗北感を覚える翔太。自分は生徒に怖いイメージを持たせてる次点で終わりだ。
会議室でテーブル挟むように向かい合って座る二人。
「さぁ、話を始めましょうか」
「はい……」
翔太は夏なのに冷たい汗を流した。