リストカット
「実は……松山さんがリストカットをしたんです」
「えっ!?」
急な話で、裕也は戸惑っていた。栞奈がリストカットをしたという事実にかなり驚いているだろう。
「今は大丈夫ですか?」
「まだ眠っています」
「そうですか……」
「あの!」
「はい?」
翔太はボロボロな左手を握り締めた。裕也は何か感じ取ったのか、話し掛けてみた。
「先生、貴方もやりました?」
「えっ?」
「リストカット……」
まさか見られていたということに驚く翔太。まさにその通りで、栞奈と同類なのだ。
「私もいじめられてて……」
翔太はゆっくりと裕也に過去のことを話した。裕也は優しく相槌を打ってくれた。
「そうですか……。私も一回だけやりましたよ」
「えっ?」
「私もね、いじめられた。地味男過ぎて」
「そうだったんですか……」
「だから、松山さんの力になりたいな。あと……」
裕也は顔を真っ赤にして翔太から目を反らした。
「友達が欲しいんですよ。いつも一人で辛くて……」
翔太は驚いたが、微笑んだ。そして、裕也の腕を握った。
「いいで……いいよ。裕也……」
翔太の反応に裕也は驚いた。それは彼にとって、うれしいことだった。
「ありがとう!しょっ……翔太!」
なぜか、初めて会ったのに交友関係になった二人。栞奈が目を覚ますことを願った。