リストカット
昼休みになって、清香は六組を訪れた。目的はもちろん、復讐のため。
「陽菜ちゃん、彩未ちゃん。話があるんだ!」
清香が明るい声で呼ぶと、ニコニコしながら二人は清香のもとへ来た。
「どうしたの?清香」
「卓球を教えてほしいんだ」
「いいよ!」
二人は大賛成だった。清香はニヤリと笑った。陽太も隠れて見ていた。
すぐ近くにある集会室で、教えてもらうことになった。最初は基本のフォアバックから突っつきまで教えてもらった。
「覚えるの早いね」
「ありがとう!」
清香はニコニコ笑って答える。絶対に演技だと思うのだが……。
「清香、卓球部に入りなよ!」
「そうそう。うちら、奇数だから出来ないんだよね」
「まぁねぇ」
まるで栞奈が元から居なかったように聞こえる。清香は内心、嫌気が刺した。
「栞奈ちゃんは……栞奈ちゃんがリストカットしたと聞いた時、どう思った……?」
「別に。むしろ弱過ぎて邪魔だった。美帆がめっちゃ喜んでたけど」
彩未が素直に答える横で、不味そうな顔をした陽菜。清香が栞奈の親友だと思い出したからなのだろうか。
「ふーん。最低」
清香はニヤリと二人に笑った。その顔は悪意丸出しだった。
「明日も教えてね!美帆ちゃんも呼んでよね!」
そう言って、清香は集会室から出て行った。二人は唖然とする。
「彩未……不味い予感がするね……」
「うん……」
彩未は唾を飲み込んだ。二人に恐怖が押し寄せてきたようだ。