リストカット
清香は教室に戻っていると、陽太を見掛けた。本当に反省してくれたのか、清香は考えていた。
「工藤」
陽太を通り過ぎようとした清香に陽太が声を掛ける。清香は嫌そうな目で陽太を見つめた。
「お前、何してるんだ?」
「復讐よ。栞奈ちゃんをいじめた人、全員にして差し上げますの」
「だいぶ狂ったみたいだな」
「大切な友を無くせば、頭のネジが飛ぶのも当たり前よ」
「そうか……」
「あっ!」
突然、清香は何かを思い突いた。この陽太をどうにか利用出来ないか、と……。
「倉上、協力してほしい」
突然の提案に陽太は戸惑う。協力するというのは、清香の復讐のことだ。嫌な予感しかしない。
「貴方なら、いろいろやってくれそうだしね」
陽太なら何だって出来るだろう。暴言や暴力を平気で行う恐ろしいヤツだからだ。
「俺に頼んでどうする?」
「貴方ならやってくれるでしょ?暴力、暴言。それが出来れば完璧よ。あと、交友関係が幅広いから、情報を集めるのにぴったりだね」
「俺が?やるわけねぇだろ?」
「親に降り注げられるストレスを発散すればいいのに……」
陽太はそれを言われて黙ってしまった。陽太の家は酷い。それをいつも誰かをいじめて発散しているのは大当たりらしい。
「だからお願い!」
「分かったよ……」
清香はニヤリと笑った。陽太は力無く微笑んだ。