リストカット
昼休みになり、清香は硫酸を持って来てくれる陽太を待つ。
「清香、持ってきたぞ」
「ありがとう」
いかにも昼練に行く感じで、鞄とテニスラケットを持っている。陽太は演技することができるのか。
陽太に鞄の中を見せてもらうと、大きなボトルが入っていた。これが硫酸だろう。
「楽しみね」
「ああ……」
誰も居なそうなところに美帆を呼んだ。美帆は笑顔で清香のところに来る。
「美帆ちゃん、来てくれてありがとう」
「話って何?」
「栞奈のリストカットについてだけど」
「――栞奈なんていたっけ?」
美帆の言葉に清香は固まった。今回は陽太無しでやるため、不安が胸に過る。
「許さない……」
「はっ、何?」
清香は睨み付けて、美帆を森林のところに押した。
「痛っ!?」
「その言葉を発する相手が違うわ。私は栞奈の親友、工藤清香よ。貴方に相応しい罰を与えようと断罪しに来たの。ある意味復讐よ」
清香が栞奈の親友だと知って、美帆は衝撃を受ける。悔しさが込み上げてきたようだ。
「そんな貴方を許さない。さようなら、美帆ちゃん」
「えっ……ギャー!?」
清香はニヤリと笑いながら、美帆に硫酸を頭から掛けた。
「熱い……痛い……助けて……」
「さようなら、反省してください」
清香は早足でその場から離れて行った。
「ごめん……栞奈……」
美帆は溶けてドロドロになった。それを窓から幸せそうに陽太が眺めていた。