幻惑な夜
前方の信号が黄色に変わる。

対抗車線、スピードを落とすことなく突っ込んでくる車が見えた。

車の天井に楕円のライトが光っている。
同業者だ。
大手タクシー会社

新宿のメジャーなホテルからの迎車、その7割りをこの会社が握っている。

独占禁止法。
そんな言葉が頭に浮かぶ。

後ろのNBAが相変わらずジッポーをキンッ、キンッとさせている。

タイミング的には間違いなく赤だが、大手タクシー会社のタクシーはどうやら止まる気はなさそうだ。

俺はニヤリと笑う。

信号は赤に変わるが、俺はおもいっきりアクセルを踏み込む。

ウィンカーも上げずにハンドルを右に切ると、体が左に流れた。

タイヤがアスファルトと擦れあい悲鳴を上げる。

負けない、俺は負けない。

俺はさらにアクセルを踏み込んだ。
ニアミス。

勢いよく突っ込んで来ていた対抗車線の大手タクシー会社が、けたたましいブレーキ音とクラクションを響かせて止まった。


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