幻惑な夜
ブレーキとクラクションの音が同時。
クラクションを鳴らす暇があるってのは余裕だな、ええ、大手タクシー会社。
「おい! 危ないだろうがよ…危なくないか、おい」
NBAはそう言うと、ドサッとシートにもたれ掛かる。
その時、小さく小さく、聞こえないような溜め息を漏らしたのを俺は聞き逃さない。
「すいません。行けるかなあと思ったものですから」
俺は笑う。
顔には出さずに、腹の中でニヤリとだ。
タイヤを軋ませながら、勢いよく脇道へと消えていく俺のタクシーを訝し気な目で見ていた男がいた。
スタンドで白いセダンを洗車している従業員。
帽子も被らず、金髪の髪を肩まで垂らしているその男には見覚えがある。
…変わんないなお前。
その男は昔もそのスタンドにいた。
ずうっとその場所、そのスタンドで、その長い髪を金髪に染めながら働き続けていたんだと思うと、その男のスタンスと言おうかポリシーと言おうか、そんなものに俺は変な感動を覚えた。
クラクションを鳴らす暇があるってのは余裕だな、ええ、大手タクシー会社。
「おい! 危ないだろうがよ…危なくないか、おい」
NBAはそう言うと、ドサッとシートにもたれ掛かる。
その時、小さく小さく、聞こえないような溜め息を漏らしたのを俺は聞き逃さない。
「すいません。行けるかなあと思ったものですから」
俺は笑う。
顔には出さずに、腹の中でニヤリとだ。
タイヤを軋ませながら、勢いよく脇道へと消えていく俺のタクシーを訝し気な目で見ていた男がいた。
スタンドで白いセダンを洗車している従業員。
帽子も被らず、金髪の髪を肩まで垂らしているその男には見覚えがある。
…変わんないなお前。
その男は昔もそのスタンドにいた。
ずうっとその場所、そのスタンドで、その長い髪を金髪に染めながら働き続けていたんだと思うと、その男のスタンスと言おうかポリシーと言おうか、そんなものに俺は変な感動を覚えた。