幻惑な夜
一階、二階、三階と各二部屋ずつの小さなワンルームマンション。
道路に面する部屋と石神井川に面する部屋とがある。
俺が見ていたのは当然道路側の部屋で、二階の部屋だけに明かりがついていた。
カーテン越しの明かりが、窓ガラスを斜めに入る稲妻のようなヒビを浮かび上がらせていた。
俺はマンションの入口に視線を下ろした。
人が出て来たからだ。
女だ。
上下ともに白いジャージを着ていた。
俺は悪くもないのに、目を細めてその女を見た。
…えっ?
時間が止まった。
タクシーの中が一瞬で真空パックにされたかのようだ。
何も感じない…。
俺の呼吸も止まり、五感で唯一生きていたのは視覚だけだ。
それはほんの数秒で、すぐに心臓の鼓動が激しく胸を叩くのを感じた。
ドクドクドクドクドク…。
その鼓動に促されて、真空パックは破れ、時間が再び流れ始めていく…。
瞬間、後ろからいきなりクラクションをならされたんだ。
道路に面する部屋と石神井川に面する部屋とがある。
俺が見ていたのは当然道路側の部屋で、二階の部屋だけに明かりがついていた。
カーテン越しの明かりが、窓ガラスを斜めに入る稲妻のようなヒビを浮かび上がらせていた。
俺はマンションの入口に視線を下ろした。
人が出て来たからだ。
女だ。
上下ともに白いジャージを着ていた。
俺は悪くもないのに、目を細めてその女を見た。
…えっ?
時間が止まった。
タクシーの中が一瞬で真空パックにされたかのようだ。
何も感じない…。
俺の呼吸も止まり、五感で唯一生きていたのは視覚だけだ。
それはほんの数秒で、すぐに心臓の鼓動が激しく胸を叩くのを感じた。
ドクドクドクドクドク…。
その鼓動に促されて、真空パックは破れ、時間が再び流れ始めていく…。
瞬間、後ろからいきなりクラクションをならされたんだ。