幻惑な夜
「コンタクトこないだ買ったばっかしなのにぃ…。あ、そうそう、その時ね、あたし朝コンタクト付けようとしたの。そしたっけ右目付けてから左目付けたんだけど、左目見えないのぉ。えっ? て思って、洗面探したんだけどなくてぇ。しょうがないからコンタクト屋いったら、始め目医者が診察するのぉ、そしたらいきなり、君、右目にコンタクト二枚付いてるよ、だって。嘘! まじぃって。あたし朝、右目付けてから左目付けないで、また右目に付けちゃったみたいなんだよね。ダブルで。何か右目おかしいなって思ってたんだけどぉ」

「マジで?」

だからマジって…。

俺はもうレンズから二人を覗いてはいない。

話しに聞き耳を立てるのも馬鹿らしくなって、玄関に座り込んでタバコを吸っている。

上へ上へと、ゆっくりと昇っていくタバコの煙を見ながら、俺は冷静に考えてみる。




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