幻惑な夜
NBAがすぐさま乗り込み、沈むようにシートに座る。
「はぁ…」と大きく溜め息を吐くと、
「板橋の中板、双葉町って分かる?」
まるで俺など存在していないかのように、NBAは窓から外に目をやり、そうボソっと呟いた。
ちらりとダッシュボードの時計に目がいく。
22:41。
俺はウィンカーを下ろして、一般車線へとタクシーを滑らせていく。
ファン、ファン!
割り込んだ俺のタクシーへのクラクションに、俺はビクっとして、
「おお…」などと声をもらしてしまう。
背中にじんわりと汗が滲むのを感じる。
後ろのNBAが、ルームミラー越しに訝しそうな目で俺を見ている。
実際サイドミラーを見て、タクシーを一般車線へと滑り込ませたか曖昧だ。
そんな普通なら無意識に行なうはずの動作に自信が持てないのは、NBAの口から出た「中板橋、双葉町」と言うその行き先に、少なからず俺が動揺しているせいなのかもしれない。
「はぁ…」と大きく溜め息を吐くと、
「板橋の中板、双葉町って分かる?」
まるで俺など存在していないかのように、NBAは窓から外に目をやり、そうボソっと呟いた。
ちらりとダッシュボードの時計に目がいく。
22:41。
俺はウィンカーを下ろして、一般車線へとタクシーを滑らせていく。
ファン、ファン!
割り込んだ俺のタクシーへのクラクションに、俺はビクっとして、
「おお…」などと声をもらしてしまう。
背中にじんわりと汗が滲むのを感じる。
後ろのNBAが、ルームミラー越しに訝しそうな目で俺を見ている。
実際サイドミラーを見て、タクシーを一般車線へと滑り込ませたか曖昧だ。
そんな普通なら無意識に行なうはずの動作に自信が持てないのは、NBAの口から出た「中板橋、双葉町」と言うその行き先に、少なからず俺が動揺しているせいなのかもしれない。