幻惑な夜
俺はさっきから随分と色んな物を川に投げ捨てている。

タバコが三本、いや四本か。

さっきそこのコンビニで、タバコを買ったついでにツナマヨのおにぎりを買った。
そのおにぎりも半分食べたとこで、川に投げ捨てた。

ほんとは博多明太子を買ったと思っていたのに、一口食べてみたらツナマヨだったからだ。

それに今投げ捨てたコーヒーの空き缶。

チラッと目を向けると、川沿いに『川に物を投げ込むのは止めましょう!』と書かれた掲示板が立っている。

俺はその掲示板に向けて中指を立てる。

サムっ…。
よくある映画のワンシーンのようで、俺は小恥ずかしさを感じる。

「あのう、…すいません」

その声に俺は始め気が付かなかった。

ゆっくりと流れ、わずかに聞こえる川の音にかき消されるほど、その声は小さかったからだ。

「いいですかね」

籠るようなその声にようやく気付いて、俺は後ろを振り向いた。




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