幻惑な夜
俺は二人の様子をもっと鮮明に見るため、運転席から後ろを振り返った。

…が、後ろのガラス越しに見える二人には何も起こらない。

自転車に乗っていた若い男は、吸っていたタバコを投げ捨てただけで、そのまま角を曲がって見えなくなった。

…つまんねぇ。

俺はシートを倒して横になる。

前に見える三階建の家。

三階の部屋の窓の明かりは消えていた。

…ほんと、つまんねぇ。

このまま仕事上がりの明け方5時まで、ここで寝てようかなとも俺は思う。

タコメーターでバレるしなぁと考える。

さっきから2時間、俺は車を動かしていない。

俺は助手席に投げられていた制帽を掴むと、顔に載せ目をつぶった。

赤ん坊は相変わらず泣き続けているし、金髪も携帯で再び話し始めている。

後30分、俺はこうしていようと思う。

このまま寝てしまうのだけは避けたい。

また寝てしまったりしたら、三たび俺は見たくもない夢を見てしまう気がしたからだ。

三部作の完結偏など、冗談ではない。


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