【短編】『枯れ葉が舞って』
そんな秋も深まった雨降り続いていたのある日のことだった。


台風は日本に上陸こそしなかったものの、秋雨前線に湿潤な空気を供給したため、雨降りがしばらく続いたとか…。



俺達は雨だということさえ気にせず、いや逆に相合傘なんかして今日も二人で下校していた。 



こんな天候の日でも例に違えず、いつもの森の散歩だ。 

雨の日いつもと違う森の表情も新鮮でいいものだから。 


雨粒と葉の奏でる、涼やかな協奏曲。 

自然を直に感じさせてくれる土の匂いの語らい。 

濡れて輝く、清閑さの中に潜む喜びを湛えた木々の表情。


そんないつもと違った森を楽しんでいた。 



そして森の中で一番景色がよく見える、小高い崖の上に来た。



ここは森の中でも群を抜いた景色の良さで、俺達のお気に入りの場所になっていた。



そしていつものように景色を眺めながら、将来について語らいあっていた。

その時だった。 






いきなり地面が震動し、崩れだした。 




やばい。この高さから落ちたら…



秋だけは絶対に俺が……





……え? 





何が起きたか把握するのに多少の時間がかかった。 


俺は秋に突き飛ばされたのだ。 


「秋っ!」 




…秋は落ちる最期の瞬間さえ微笑でいた。






そして、秋はいなくなった。
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