手をつなごう
年末年始の休みは、引っ越し準備に大忙しだった。

一応ハウスクリーニングをしてもらったが

新しく道具を揃えられないという彩ちゃんのために

要るものを選んで置いたままにしてもらった。

古いタンスや鏡も、今流行りのDIYで色塗りをしたり

取っ手を付け替えたりすると、全く別のお洒落な物になった。

センスの良さを見ると………さすが幼稚園の先生だと思う。

「洋介さん、ここにカーテンを買って~
こっちにソファーを置くと、素敵だと思わない?」

新居に上がる予定のないオレに、次々夢を語る彩ちゃん。

「はいはい。
素敵なお家にするためにも、手をしっかり動かしてね。」

一人暮らしの淋しさよりも、今はワクワクの方が勝ってるみたいだ。

「ねぇ~洋介さん。
お友達、出来るかなぁ?
新人5人って言われてるから……
仲良くなれて、みんなでここでご飯を食べたり
お泊まり出来たらいいなぁ~。
食後のデザートに、洋介さんのパンを食べて。
子供の事や仕事の事を沢山話すの!
そんな時間がくるかなぁ?」

明るくしてるけど……やっぱり不安なんだ。

カップも味見係も………

お店に行きたいって言ってるんだよなぁ。

お兄ちゃんは、いつだって店にいるのに。

「そんなに遊ぶ暇があるなら、店を手伝わせるぞ。」

「だって、お仕事始めたらバイトは…………。」

「だ~れがバイトって言った?
妹ちゃんなんだから、お家のお手伝いをしなさい!
残り物をやっつけたり、新しいパンを考える手伝いをしにおいで。
友達は…なるべく沢山連れて帰って来るんだよ。
気に入って、買ってもらえるように。」

ニッコリ笑うオレに

「うん。」って、良い笑顔を見せてくれた。
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