生徒会長は女の子が苦手です
「今日はありがとう」


「あぁ、うん…」


伊織は物言いたげな顔をしていたけど、何も言わなかった。


「また明日」


そう言って、玄関を開けて家の中に入ろうとする。


すると、伊織が開けようとしたドアを押さえてしまった。


「…へ?」


「…あのさ」


振り返ると、伊織の整った顔がすぐ近くにあった。


「なんで、俺のこと面倒見てくれなくなっちゃったの?」


「へ?」


「へ?じゃなくて。答えて?答えてくれないとこのドア開けさせない」


近所の子どもが自転車で走り抜ける。


きゃあきゃあと騒がしい声が左から右へと流れていく。


そしてまた、一段と静かな空気が私たちの間を流れる。



「伊織…?」


「七瀬は、俺のこと嫌いなの?」



そう言った伊織はどこか弱々しくて、私に助けを求めているようだった。



「ち、ちがう。そんなことない」


「じゃあなんで…」


「伊織近いって!ちょっと離れて…っ」


「無理。答えないとダメ」


どんどん近づいてくる伊織を押し返そうと抵抗するけど、伊織の力には敵わない。


「えっと…、伊織にはもう私じゃなくてもいいと思ったのっ」


「は?何言ってんの?意味わかんない」
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