生徒会長は女の子が苦手です
「ごめんね、原因不明なの、まだ。


少し待っててもらえる?」


みんなは大きな返事をする。


こんな時代もあったなぁ。


私は物思いにふけりながら、客席側を向いて拡声器に声を入れる。



『生徒会書記の南と申します。


ただ今、原因不明のトラブルで停電が起こっています。


照明がつくまでは席を動かず、落ち着いてお待ちください』



それからしばらくして、恋菜が走ってきた。



「ななちゃん、ななちゃん、ブレーカー落ちてたの。


もうすぐ桃矢がスイッチ入れてくれるの」


「ありがとう」



その言葉と同時に、スポットライトや非常口の光が点灯した。


放送部のかすかな明かりも見える。


吹奏楽部の1人が持っていたマイクを借りると、スイッチを入れた。


『大変お待たせいたしました。


校内全域のブレーカーが落ちたようでしたが、先程、無事解決いたしました。


ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません。


引き続き、吹奏楽部の演奏をお楽しみください』



こうやって、前代未聞のトラブルは幕を閉じた。


このトラブルのおかげで生徒会は、プログラムの修正や、放送部との段取りで結局、最後まで仕事でいっぱいになってしまった。


吹奏楽部の演奏を聞けなかったのが悲しいが、これも仕事なので仕方ない。
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