恋のコーチは期間限定
 いつ蒼葉くんが来てもいいように食材を買ってきていた自分に苦笑する。
 これじゃまるで来て欲しいみたい。

 お陰で簡単な食事はすぐ作れて出せたから良かったのだけれど。

「そっか。美希さんは食べて来たのに作らせてすみませんでした。」

 彼にだけお皿を並べる私にすまなそうに頭を下げた。

「いいの。本当に助かったから。
 それより替えの服がなくてごめんね。
 今日は寝ちゃわないうちに帰らないと。」

 かと言って脱がれても困るし、上着だけ脱いだワイシャツ姿でも十分かっこよくて、どっちにしても落ち着かなくて困る。

「そうですね……。
 居心地がよくて、つい。」

「少しなら……持って来てもいいわよ。
 着替え。」

「え………。」

 顔を上げた蒼葉くんがみるみる顔を赤らめた。

「ま、待って。変な意味にとらえないで。
 やっぱりナシ。ナシにしよ。
 ちょっと軽率だったわね。
 うん。ごめん。ナシ。ナシ。」

「ダメですよ。一度言ったことを覆すのは。
 嬉しくて顔が熱くなっただけです。
 悪さはしません。天に誓って。」

 片方の手を胸に当て、もう片方の手のひらを前に向けて誓いますというようなポーズを取った。

 それがすごく嘘っぽくて笑ってしまった。







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