恋のコーチは期間限定
 したたり落ちる汗を腕を上げてシャツの肩部分やリストバンドで拭いているみたいだけど、それでは到底補えない汗が彼の額から噴き出していた。

「汗、すごいね。タオルいる?」

 私のタオルを差し出すと「いえ、荷物持ってきます」と立ち上がった。

 差し出したタオルは行き場を無くて宙を彷徨ってから私の顔に不時着した。

 こっちこそしまった、よ。

 乙女としての自覚は皆無な行動よね。
 自分が使ったタオルを差し出すなんて。

 こうべを垂れた視線の先に、可愛い草花を見つけて思わず手折って数本を手にした。

「草……が、どうかしましたか?」

 戻ってきた彼は不思議そうに質問をしてベンチの脇に荷物を置いてから腰を下ろした。

「シロツメクサ。
 可愛いよね。花言葉も『私を思って』とか『約束』とかなのよ。」

 興味ないよね。こんな話。

 そう思って隣を盗み見ると感心した様な顔で私の手の中のシロツメクサを見つめていた。





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