恋のコーチは期間限定
 なんて切り出そうか。
 そう思いながらテニスコートに来ていた。

 今日はバックハンドの練習するって言ってたなぁ。

 厳しいんだよね。
 普段は優しいくせにテニスとなると手厳しくて。
 フォアハンドだけで何日費やしたか……。

 彼は珍しく事務所の中のベンチに腰を下ろしていた。
 誰かと電話しているみたいで声を掛けるのははばかられた。

 聞くつもりは無かったのに蒼葉くんの話している声が聞こえてしまった。

「まだセフレじゃないし。」

 まだ………って。
 誰と誰のことを話して……。

「美希さんはそんな人じゃない。」

 やっぱり、私のこと?
 聞いてはいけないと思いつつも、聞かずにいられなかった。

 声をひそめ、続きを待った。

「体だけなのは……。
 俺がそう望んでるだけだ。」

 そんな………。

 愕然として、これ以上、聞いていられなくてその場を離れた。








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