恋のコーチは期間限定
「ごめん。ちょっと乱暴だった。」

 罵られて叩かれて追い出されても仕方ない。
 美希さんとはもう……。

 素直に反省の色を浮かべた俺に美希さんは鼻先にキスを落とした。

「やっと年相応の顔してくれた。」

「え………。」

「なんか私の前じゃ……無理してるっていうのかな。
 友達といる時の方が自然。
 今は……自然かな。」

 力なく笑う美希さんに驚いて声も出ない。
 笑って……る?

「怒って……ないの?」

「怒ってるよ。待ってって言ったのに。」

「待ったら……どうしてた?」

「……分からないけど。」

 拗ねてしまったような美希さんを抱き締めた。

「俺………。」

 美希さんのことが………。

 それは声にならなかった。

 美希さんこそ年上の微笑みで「期間限定でも恋人でいてくれるんでしょう?」と言われて「そうだよ。もちろん」としか言えなかった。

 年上の微笑みは当たり前か。
 本当に年上でそれは絶対に越えられないのだから。

 だから別の言葉を吐き出した。






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