恋のコーチは期間限定
 シャワーを浴びながら呟いた。

「そろそろ……潮時かな。」

 壁に軽く頭を打ち付けるのはもう何度目になるか分からない。

 明日から休みだ。
 だから………。

 決意をしてシャワーを止めた。
 鏡に映る自分と目を合わせて示し合わせるように頷いた。


 脱衣所へ行くと背を向けてしゃがみこんでいた美希さんが逃げるように服のまま風呂場へと駆け込んだ。
 ちょっと悪ふざけが過ぎたかなと苦笑する。

 このままここにいたらどうするだろう。

 服を着たままシャワー?
 それとも脱いだ服だけをこっちに投げ捨てる?
 そしたら出てくる時はどうするんだ?

 からかいたい気持ちがむくむくと湧き上がるけれど、風呂場に向かって声をかけた。

「心配しなくても俺、部屋に行ってるからゆっくり入ってきて。」

 隅々まで綺麗にしてもらわなきゃね。
 嫌な匂いも……何もかもを洗い流してきて欲しいから、ね。

 一緒にシャワーを浴びて確認なんてしなくても、何も無かったって信じてる。
 別の誰かに抱かれた後に俺のところに来るような人じゃないって、そのくらいは………信じていたい。








< 149 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop