恋のコーチは期間限定
 用意してくれてあった朝食を食べてから、出ていく蒼を玄関まで見送る。
 起きてすぐにこれを羽織っててと渡された蒼のパーカーはダボダボでワンピースみたいに長い。

 振り返った蒼が口を開いた。

「いってきます……って、新婚さんみたい。」

 口元に手をかけて目だけこちらに向けた蒼に苦笑する。

「思い描くことが可愛らしいね。」

 一瞬、ムッとした顔をして、次の瞬間には意地悪な顔に変わった。
 しまった。地雷……踏んだかも。

「じゃ勝手にいってらしゃいのキスするからいい。」

 言うが早いか噛みつくようにキスされて後退ってよろめいた。

「そうだ。スポーツバッグに昨日の服が入れっぱなしだから洗濯機に突っ込んどいて!
 ね、俺の奥さん。」

 離れたところでチュッってキスする真似までされて目眩がしそうだ。

「知らない!!!」

 ハハハッと楽しそうな笑い声を残して蒼は出掛けていった。
 いつもいつもいつも!これじゃ本当にどっちが年上か分からない!!

 憤慨しつつもダボダボのパーカーを抱き締めるように自分に腕を回した。
 蒼に包まれているみたいだ。

 文句を心の中で並べているくせに、今は……どっちが年上か分からないことがそんなに嫌じゃない自分に苦笑した。

 蒼が……無理してる感じがしないからかな。









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