恋のコーチは期間限定
 蒼の頬を伝う汗をそっとなぞった。

「ん?」

「汗……。」

「ごめん。俺、汗っかきで。
 汗臭いよね。シャワー……。」

「待って。」

 離れていこうとする蒼に抱きついた。

「好きだよ。その……蒼の汗のにおい。」

「え………。」

「なんていうか……余計に蒼に近づきたくなるにおいっていうか。」

 お互いに地に足がつかないこんな夜は蒼のにおいにまみれていたい。
 不安が何もかも無くなるように。

「そういう気分になるにおい?」

 ちょっと意地悪な顔をした蒼が私を抱き締め直した。

 すごい発言をした気がして顔を俯かせる。

「もともと汗はフェロモンらしいけど……そういえば俺もそうかも。」

「え……。
 わざわざ話を合わせなくてもいいのに。」

「合わせてないって。
 美希さんはあんまり汗かかないしすぐシャワー浴びちゃうから嗅ぐ機会もあんまりないけど……。」

「それは……。」

 それはさすがに乙女としての恥じらいが私にだって少しはある。

「最初の……テニスコートでベンチに隣に座った時。」

「あの時は気を抜いてて汗だくで!!」

「すごくいいにおいがした。」

「よくない!くさいから!!」







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