恋のコーチは期間限定
「誰も俺とは試合したがらない。
 つまらなくてテニスやめようかって思ってた。」

「天才ゆえ……かぁ。」

 贅沢な悩みの気がしてしまうけど、きっと蒼にとっては切実な悩みだったのだろう。

 寂しそうな横顔に胸が痛くなって蒼の体に腕を回した。

 蒼は腕の中でクスクスと笑った。

 さっきまで寂しそうだったのに、今度は楽しそうだ。

「それなのに、ある大会で誰かの応援に来ていた人が俺と試合してみたいって。」

 蒼はクククッと笑って続けた。

「昔のことだし、本人か確証が持てなかったから言わなかった。
 それに俺はあの夜のテニスコートで出会った美希さんに惚れたから。」

 サラッと惚れたなんて言われてドキドキするのに、それよりも驚くことを言われて………。

「……待って。どういう……。」






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