恋のコーチは期間限定
 笑っていた美希さんは急に声を落として打ち明け始めた。

「だってピアノがプロ並みなんて知らなかったし、それにテニスもすごかったんでしょ?
 道を歩けば女の子が振り返るし……。
 私なんかが側にいていいのかなって。」

「ちょっと待ってくれよ。」

 急にとんでもないことを言い始めた美希さんを制止した。

 美希さんは俺にほとんど何も聞かない。

 髪の毛の色だって、初対面で名前を聞く前に「地毛なんだってね。ハーフなの?」なんて言う奴もいるのに。
 美希さんとは最近になってやっと話題に上った程度。

 他人に自分のことを詮索されるのは嫌いだ。

 でも美希さんになら自分のこと話したって構わないし、変な誤解されるくらいなら聞いて欲しい。

「俺、モテるよって自分で言ったら美希さんに馬鹿にされたんだけど?」

 自嘲気味に言うとハハッと力なく笑った美希さんが「ごめん」と呟いた。
 いつもの……美希さんらしくない。







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