恋のコーチは期間限定
 今なら蒼に少しは太刀打ち出来るかもしれない。
 3ヶ月も特訓してきたんだから。

 そんな淡い期待は脆くも崩れ去った。

 ハンデをつけるナメた真似はするくせにサーブは容赦ない。

 鞭がしなるような音。
 目で追うのも危うい猛スピードで通り過ぎるボール。
 力が違い過ぎる。

「フォールト。」

 蒼のコールにハッとする。
 ファーストサーブが決まらなかった。
 チャンスだ。

 トスを上げ、最初よりは緩やかな球がコートに入る。

「イン。」

 蒼と何度も練習したグリップで打ち返す。
 ヨシ。綺麗に決まった。

 と、思ったのも束の間。
 左側の空いたスペースにストレートに打ち込まれた。

「イン。」

 冷酷に告げられる結果。

「ゲーム、高坂、ファーストゲーム。」

「ゲーム、チェンジ、サイズ」

 コートチェンジのコールだ。
 蒼は無言でコートを移動する。

「中原、トゥ、サーブ。」

 コールされてサーブの構えに入った。









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