恋のコーチは期間限定
「ただ優秀なだけじゃ意味がないのは高坂くんなら理解できると思いますよ?
 それに……高坂くんには早く働いて安心させたい人もいるようですし。」

 チラリと美希さんの方へ視線を送って微笑んだ。

 足元見やがって。

 前の俺なら絶対に断っていた。
 そんな面倒なことに巻き込まれたくない。
 けれど今は……。

「詳しいことは後日順を追ってお伝えします。」

 そう言った副社長………と呼んでいいのか、彼は「私がいるとゆったり出来ないでしょうから」と帰っていった。

 美希さんは彼が帰ると不安げに俺を見つめた。

「嫌なら………やめたらいいんじゃないかな。」

 不安にさせてごめんね。

 そんな気持ちになっているのに俺の胸の奥に灯った闘志は簡単には消えなかった。

「いや。俺を手懐けられると思ったあいつの鼻を明かしてやる。」

 面白いじゃないか。
 俺を甘く見たことを後悔すればいい。

 そして………。
 美希さんとこの先ずっと一緒にいられる為に今やることは明確だった。
 例えそれが大きな賭けだとしても。








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