恋のコーチは期間限定
 そんな立場いらない、なんていうのは、絶対に本心なんかじゃない。

 あんなに警戒していた透梧さんを今では尊敬していて、仕事ものめり込むほど夢中になっているみたいだ。

 仕事と私、どっちが大切?
 なんて言いたくないけど、ちょっとだけ妬けちゃうな。

 蒼は冗談っぽく透梧さんにヤキモチ妬いてるみたいな言いぶりだったけど………私が妬いちゃうよ。
 蒼といつも一緒にいる透梧さんに。

「ねぇ。付けてよ。」

 甘えた子どもみたいな言い方なのに色気を漂わせる蒼は手に負えない。

「どうせスーツで隠れちゃうでしょ?」

 仕事帰りなのか、今もスーツだし、何より前に見た時もそうだった。

 前、透梧さんに話をしに行った時に働いている蒼をこっそり見せてもらえた。

 スーツ姿で仕事に集中している彼はずいぶんと大人びて見えて余計に遠い存在な気がしてなんだか寂しくなって………。

「ひゃっ。」

 また首元にキスをされて体をよじった。

「美希さんが付けないなら俺が付ける。」

「ま、待ってったら!」

 蒼をなんとか制止すると手を取られ、蒼の胸元に導かれた。






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